ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

目標はポリマーと同等以上の伝導度を持つ透明なオリゴマー分子の開発

西長 亨

両極性有機半導体も研究

オリゴマーで長いものが作れると、先生は最初から確信されていたのですか。

 溶媒に溶けさえすればできると思っていました。

実験をしていた学生さんから、できたと聞いた時はどんなお気持ちでしたか。

 まあ、できると思っていましたから(笑)。ただ、忍耐強くよくやってくれたとは思います。

今はどういう段階なのですか。

 可溶性の置換基がついたものを12個まで並べられることが分かり、ドープさせたものをいろいろ比較すると、8量体くらいがよさそうだという感触を得ました。だからまずは8量体で伝導性が発現するようなユニットを組み合わせている段階です。まだ最終的なところまではいっていませんが、ひとつ手前の段階くらいまではいっています。

高い伝導性と透明度を両立させた分子を創製できると、最終的には何ができるのですか。

 そこまではっきりしたビジョンがあればいいのですが…。とりあえずはPEDOTの方でタッチパネルなどに置き換えようという動きがひとつあります。今のタッチパネルの透明電極は、主にITO(酸化インジウム)が使われています。しかしインジウムはレアメタルなので、それにとって代わる代替材料が探索されていて、PEDOTもそのひとつの候補になっています。PEDOTにはいろいろな類縁体がありますが、私はその中のオリゴマー版で特に透明度を追究していくつもりです。

伝導性と透明度を両立させた分子という当面の目標に到達できるのは、いつ頃になりそうですか。

 それはちょっと…(苦笑)。今実験をしている分子が的中すれば、そういうものが作れたといえるかもしれませんが、作ってみて外れていたらまたちょっと作る分子を換えないといけないかもしれません。

今までお話を伺ったテーマ以外の研究もされているのですか。

 有機半導体の材料の中で、トランジスタになるような材料の開発もしています。最初はオリゴチオフェンに他のユニットを混ぜてみたりして、論文も書きましたが、どうもそれでは面白くない。他の人がしていないような発想で、p型にもn型にもなるような両極性の半導体が有機分子で作れないかと考え、チオフェン環を使って試みています。反芳香族性を利用した狭いHOMOとLUMOのギャップを持つような分子を作っています。一番基本になる小さな分子を作り、単結晶でp型にもn型にも動くようなものが作れました。もう間もなくその論文を投稿します。

反芳香環をもつ両極性半導体

次のページ: オリジナリティで勝負したい

1 2 3 4 5 6