One Hour Interview
目標はポリマーと同等以上の伝導度を持つ透明なオリゴマー分子の開発
ポリマーでもモノマーでもなく、オリゴマーを使って高い透明度を維持しつつ、高い伝導度を発現する分子を創製する――。
西長亨さんは、そういう目標を掲げている。それができれば、レアメタルフリーの透明電極が実現する可能性もある。
「他の人とは違う発想の研究をしたい」と明言する西長さん。
忍耐強く実験と思考を積み重ねていく地道な作業の道のりだが、どうやら研究の進捗には確かな手ごたえを感じているようである。
西長 亨
首都大学東京大学院
理工学研究科分子物質化学専攻 准教授
π共役系の化合物群に興味
まず、今取り組んでおられる研究について、わかりやすくご説明いただけますか。
有機化学の中には、合成を開発する流れと、構造とか物性を追究する流れがあります。私の研究は構造と物性の相関を見るのが基本です。こういう化合物を作った時には、どういう性質が出てくるのだろうかと調べたりする構造有機化学の分野ですね。その中でも私は、π共役系の化合物群に興味を持っています。二重結合と単結合が交互に連なることで、色が出るとか電気を流すというような物性が表れる化合物群です
それは、もともと自然界にある化合物なのですか。
あります。たとえば眼の中で色を感知する部分には、二重結合と単結合が交互につながっている分子があります。ただ、私たちが作っているのは、天然にはないものです。ひとつのキーワードになるのが、導電性高分子です。私の研究は、決まった長さのモデル分子を精密に作り上げて、その性質を調べていくというスタイルです。たとえば同じ繰り返しのユニットが10個とか12個連なっているものをきっちり作り分けて、物性を測っていく。そうすることで全体の性質が見えてくるわけです。その時使うのはポリマーではなく、長さが規定されたオリゴマーを使っています。オリゴマーの性質を調べることによって、導電性高分子がなぜそういう性質になるのかというようなことを追究するのがひとつの方法です。