One Hour Interview
電子、分子、外部刺激の協奏で新たな物質の創成へ
張 浩徹
オリジナリティは研究者の命
研究で壁にぶち当たったときの対処法は?
食べる、飲む、ですね。思考回路がシンプルにできていて、できるかできないか、やりたいかやりたくないかでたいていのことを決めていますから。あまり悩んだりはしないですね。
学生さんにもそういうのですか。
いや、思考パターンまでは押しつけないですよ。
英国のバース大学で研究員をされていたこともあるのですね。
ずっと同じところにいたこともあり、半年強ほど行っていました。向こうは夕方の5時になると皆さっさと研究室を出てパブに行きます。それでちゃんと実績は上げているんです。クオリティ・オブ・ライフということを考えさせられましたね。
そういうことを日本ではなぜできないのでしょうか。
そのためには研究のプランをしっかり立てて、きちんと自分をマネジメントしないといけません。それはなかなか難しいのですが、今の研究室はそれをやろうとしていますし、学生諸君も頑張ってくれています。 僕も週に何度かは早めに帰るようにしています。ただ、家で仕事していますが(苦笑)。
ご自身の今後のキャリアプランはいかがですか。
いい研究をたくさんやる。基本はそれしかありません。人と違うことを考え、実行しているという点については自信がありますし、これを続けていけば誰も追いつけないところまでたどり着けるという確信を持って研究しています。自分の研究室を持つというのもひとつの大きな目標です。数年以内には持ちたいと思っています。
研究者にとって、人と違うことは大事ですか。
僕はあらゆるものを分子スケールに置き換えて考えるようにしています。街を歩いているときもそうしています。あまりやりすぎると変な人だと思われるかもしれませんが、自分本来の個性を発揮できる力を日ごろから育てていれば、同じものを人と違う観点で見ることができると思います。オリジナリティは研究者の命ですよ。
北海道大学大学院 理学研究院化学部門准教授 張 浩徹[ちゃん・ほちょる] 1973年、京都生まれ。京都大学大学院工学研究科合成・生物化学専攻修了。博士(工学)。同大大学院助手・助教を経て、2008年11月から現職。その間、科学技術振興機構さきがけ研究「秩序と物性」領域研究員、理化学研究所空間秩序研究チーム客員研究員も経験し、2008年には英国バース大学で半年間客員研究員を務めた。現在、北海道に単身赴任中。1歳になる長女と会うことが楽しみだという。
「第29回松籟科学技術振興財団研究助成受賞」
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