ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

電子、分子、外部刺激の協奏で新たな物質の創成へ

張 浩徹

貴金属フリー触媒のプロジェクト

その研究は京都大学の頃から続けておられるのですね。

 そうです。こちら(北海道大学)に来てからはもうひとつ、エネルギー問題を解決する化学もやろうということで、加藤昌子教授と一緒に研究しているテーマがあります。東日本大震災後、再生エネルギー、クリーンエネルギーという課題が社会的に大きな注目を集めていますが、僕たちはその中でたとえば水から酸素や水素を取り出す触媒の創成をひとつのテーマに設定しています。金属錯体が水を酸素と水素に分解する触媒として活性を示すことはずっと前から知られていますし、そういう研究も盛んに行われています。ただ今のところ、水素を発生させる触媒には、世界的に見ても白金などの貴金属がその主流として使われています。

 そこを僕たちは、地殻に豊富に含まれる鉄などのユビキタス元素、安価で大量にあるもので活性を出そうという取り組みをしています。そんなことは無謀だという人もいますが、僕のグループでは高価な金属は一切使わないことにしています。貴金属フリーのプロジェクトです。

その研究は現在、どこまで進んでいるのですか。

 近々論文を発表する予定なので詳しいことはお話しできないのですが、我々が使っている有機骨格は電子を動かすのが得意なので、それを利用して触媒をつくれないかといろいろトライしています(図3)。最近、非常に面白い現象を発見しました。金属だけで反応させるという固定観念から脱却し、金属をあくまでもサポート役として位置づけ、有機骨格をうまく使ってやるとこれまでになかった新しい反応系を設計できることを証明しつつあります。

図3:触媒設計に向けた設計。多くの電子をプールすることが可能な錯体ユニットを合理的に集積化し電子移動を制御できる。

水の分解がターゲットなのですか。

 そこに絞り込んでいるわけではありません。燃料電池や光エネルギー変換などの研究も進めています。水を分解して水素、酸素を出すのは、その中のひとつのターゲットということです。安価な金属を使い、自然界にあるような有機骨格をモデルにして協奏的に反応を駆動する。そういうやさしい触媒が開発できればと思って日々研究しているところです。

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