ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

最難関天然物の合成に世界で初めて成功

徳山英利

全合成は10種競技

構造をガラッと変えるということですが、そういうアイデアはどういうときに出てくるのですか。

 紙とかホワイトボードに構造式を書きながらディスカッションしているときに出てくることが多いです。ここの結合をこっちに動かすというようなアイデアが突然出てきます。ある意味、数学の図形問題に似ているところがあるかもしれません。あるところに補助線を引くと、一発で証明できるというようなところが。だから立体的な空間認識が大切です。三次元のパズルを解いているようなものです。

ニコラウ先生も同じ研究をしていると知ったとき、これはもうだめだ、勝てっこない、とは思いませんでしたか。

 思いませんでした。この研究を手伝っていてくれた学生さんが楽天的だったので(笑)。でも、楽天的というのはすべての研究者にとって大事なことだと思います。特に重要な研究ほど評価が定まるまで何年もかかる傾向が強いからです。その状況で朝から晩までずっとやり続けるのですから、ネガティブだとやっていられないでしょう。だから私もだめだとは思いませんでした。うまくいかなかったら方針を変えればいいじゃないか、くらいの気持ちでした。

他に化学の研究者にとって大切な要素は。

 アイデアとセンスですね。当然、基礎的な学力も不可欠ですが、実現したい反応を検討するとき、センスのある人は選ぶ反応条件が適切で、試す回数が少なくても目標を達成することができます。センスがないと見込みの低い実験を平気でやったりして、それだけで数ヵ月が過ぎてしまいます。

先生の研究を一緒にやった学生さんはセンスよかったですか。

 よかったですよ。全合成は10種競技ともいわれます。物理化学とか無機化学、有機化学などの知識を総合的に使いながら、場面場面で自分の引き出しからパッと何を取り出すか。そこはやはりセンスだと思います。

連続反応を用いたディクティオデンドリン類の合成

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