次代への羅針盤
サイエンスも総力戦の時代です
十倉好紀
今の若手に足りないものは
私は長年、世界トップの研究センターを日本につくるという目標を掲げてきました。だから私はこのセンターに日本のトップ研究者を集めました。現状でこのセンターが世界トップとは言い切れませんが、一流の科学誌などに投稿している論文の数はたぶん日本でトップですし、世界のトップクラスの研究機関と比べても同等かそれ以上でしょう。理化学研究所というのは人材をフレキシブルに集められる組織になっているのです。もちろんトップ研究者に続く人たちがどんどん出てこないといけないので、若手のリーダーを育てることにも重点を置いてセンターを運営してきました。
私たちの頃と比べれば、今の若い研究者は優秀です。教育の環境も設備も整っていますし、日本は研究者の教育に関してもそれなりの伝統・ノウハウが蓄積されています。今の学生の卒論や修士論文は、私たちの頃とは比べものにならないほど高いレベルにあります。
では、足りないのは何かというと、これは私自身、あまり好きな表現ではないし、誤解を招くところもありますが、ハングリー精神でしょう。