次代への羅針盤
教科書に載るような仕事を、そんな望みを抱いてほしい
花岡文雄
冒険を恐れずに
毎年4月、私は研究室に入ってきた学生にこう言っていました。「時には踏み慣らされた道を外れて森に飛び込んでみましょう。きっと今まで見たことのない何かを見つけるでしょう」と。
グラハム・ベルのこの言葉が私は好きです。人の行っていないところを目指す、人のやっていないことをやる。そういう姿勢を若い人たちが持てばいいなと思います。私自身も若いときは、新しいことをやらなければ面白くない。できれば教科書に載るようなことをしたい。そんな望みを抱いていたものです。
それに加えてもう1つ、いい共同研究をすることが大事です。対等の研究者として相手と意見を戦わせ、フランクに情報を交換し、ごく普通の人と人としての関わりを持つ。相手はある意味、ライバルでもありますが、自己主張ばかりするのではなく、お互いに長所を出し合って1人では成しえない研究をすることが重要です。成果を横取りされるのではないかと危惧する人もいるようですが、最初の1歩を踏み出すことが大事です。それがうまくいけば海外の学会に招待されたり、また共同研究のパートナーから別の研究者を紹介されたりして、好循環が生まれるものです。