ハリマ化成グループ

次代への羅針盤

次代への羅針盤

教科書に載るような仕事を、そんな望みを抱いてほしい

花岡文雄

さらに重要性を増す遺伝学

 親から子どもに同じ形質がなぜ伝わるのか、あるいはなぜ子どもに親と違うところがあるのか、そうしたことを基礎に置いた研究をするのが遺伝学です。国立遺伝学研究所は、日本の遺伝学研究の中核的な存在です。

 発足は1949年、今年でちょうど創立70年になります。ワトソンとクリックによってDNAの二重らせんが発見されたのは1953年ですから、その前から日本では遺伝学がこれから重要な学問になると考えられていたわけです。むろん今日でも、遺伝学の重要性は全く変わっていません。ゲノム編集によって遺伝子を改変できるようになり、動植物の品種を改良したり、医療に役立てたり、寿命を延ばしたりすることにも応用できるようになってきましたし、生物学的な研究のツールとしてもますます有用なものとなってきています。そう考えると遺伝学の重要性はむしろさらに増していると言ってもよいでしょう。

 この遺伝研にいる研究者は、ポスドクも含めるとおよそ150人。テクニカルスタッフや管理部門の職員なども合わせると総勢約400人の体制です。70年にわたり多くの実績を上げてきましたが、その中で1つ挙げるとすれば、木村資生先生(故人)と太田朋子先生が提唱された分子進化の中立説でしょう。

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