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One Hour Interview

One Hour Interview

触媒反応促進機構の解明に挑む

椿 俊太郎

「なぜ」の解明を重視

マイクロ波の研究者として、先生の独自性はどういったところにあるのでしょうか。

 海外には、マイクロ波を照射したらこんな反応が起きたとか、こんなものができたという論文が結構あります。しかし、私たちはなぜそうなったのかという機構を解明することを重視しています。反応が起きた機構がわかれば、そのプロセスを自在にデザインできるようになりますから。

 そのために、私たちは放射光X線などを使って、「その場観察(in situ/operando)」といわれる方法でマイクロ波を照射した際の物質の構造変化を見ています。その場観察というのは、簡単にいえば試料に起こっている変化を連続的に見るものです。実は世界的にはマイクロ波でこういうことをしている研究者は極めて少なく、そこが私たちの大きな強みだと思っています。こうした機構の解明を通じて、新しい反応をつくる研究も行っています。

研究に使う装置も自分たちで開発することが多いそうですね。

 もちろん実際の製作は装置メーカーなどに依頼しますが、自分たちでアイデアを出し、自分たちでデザインすることは多いですね。今、私たちは27MHzから30GHzのマイクロ波発振器を持っていますが、これだけ広帯域の装置を持っているのはおそらく世界でも私たちだけでしょう。

マイクロ波発振器の使い方を指導する椿准教授

マイクロ波を使った触媒の研究は現状、どこまで進んでいるのですか。

 マイクロ波で局所の温度を高くする現象を説明できるところまでは来ています。なおかつ、こういう材料にはこの触媒を使うと温まりやすいといったプロセスのデザインもできつつあります。

 ただ、原理のようなものはわかってきましたが、まだまだ難しいことがたくさんあります。光触媒のように、マイクロ波触媒という言葉で教科書が書けるくらいに理解するのが最終のゴールです。そこに向かって、これからも研究に励みたいと思っています。

椿 俊太郎[つばき・しゅんたろう] 1981年、東京都生まれ。京都大学農学部森林科学科卒。同大大学院農学研究科地域環境科学専攻博士後期課程修了。博士(農学)。高知大学特任助教、東京工業大学助教、JSTさきがけ研究者、大阪大学特任講師など経て2022年4月より現職。2024年7月に九州大学伊都キャンパスで行われたマイクロ波の国際会議(5GCMEA 2024)では、そのオーガナイズを担った。

[第38回 松籟科学技術振興財団研究助成受賞]

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