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One Hour Interview

One Hour Interview

触媒反応促進機構の解明に挑む

マイクロ波は、さまざまな触媒反応を加速させる作用を持つ。
その研究に20年取り組んできた椿俊太郎さんは、
“マイクロ波のプロ”を自認する。

椿 俊太郎

九州大学大学院
農学研究院生命機能科学部門
九州大学カーボンニュートラル・エネルギー
国際研究所(兼任)准教授

高まるマイクロ波への注目

先生はいつ頃からマイクロ波に着目するようになったのですか。

 学部生のときは体育会のアメフト部にいたので、研究の「け」の字もしていませんでした。大学院の修士課程に進学し、生化学の研究室に入ったところ、指導教官から「君は体力がありそうだから、マイクロ波をやりなさい」といわれて、それからです。しっかりプロセスを設計すると思っていた結果が出るようになり、マイクロ波研究の面白さに取り憑かれました。それから、気づいたら20年が経っていました。

今、マイクロ波に対する注目が高まっていると聞きました。なぜなのでしょうか。

 いくつか理由があります。例えば、従来の化学プロセスでは、重油などの化石燃料を大量に使って燃焼させていました。その結果、 CO₂を大量に排出し、大気を汚染するなどの問題が生じています。このような状況に対処するため、再生エネルギーを化学プロセスに使うケースが増えており、風力発電などが盛んに行われている欧州では余剰電力が生まれるようなケースが出てきています。日本でも九州は太陽光発電などが多いため、発電抑制が行われることがあります。マイクロ波を活用したプロセスが実現すると、そのような余剰電力をうまく使うことができるようになります。

それはどうしてですか。

 マイクロ波による加熱は、電力を素早く、効率的に熱に変換することができるからです。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーは、気象条件などによって発電力が大きく変動します。余剰電力が出た場合、マイクロ波はその電力を使って瞬時に化学プロセスを駆動させることができます。ですから、オンデマンドでプラントを動かすことに適しているとされています。

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