ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

触媒反応促進機構の解明に挑む

椿 俊太郎

CO2排出量を90%削減

そのほかにもマイクロ波が注目されている理由はあるのですか。

 マイクロ波にさまざまな反応を加速させる作用があることも、注目される理由の1つです。例えば難分解性のバイオマスを活用するには、高い反応温度や長時間の反応が必要になります。この分野で多くの技術開発が行われてきたにもかかわらず、実用化がなかなか進まない原因の1つがそこにあります。しかしマイクロ波を使うと、バイオマス変換のみならず、さまざまな物質の加熱、食品の殺菌、乾燥凍結といったプロセスを早く行うことができるのです。

 反応やプロセスが速くなれば、消費エネルギーも減ることになります。例えば、化石燃料を使った従来の電気炉加熱をマイクロ波加熱に置き換えると、CO2の排出量は最大でおよそ90%削減できるといわれています。化石資源を大量消費する重厚長大の化学プロセスを、超低消費エネルギーで駆動するマイクロ波のプロセスに置き換えることが期待されています。

それなら、どんどんマイクロ波に置き換えればいいのではないでしょうか。

 実は2010年代には、有機合成のラボならどこにでも置かれているくらいにマイクロ波の合成装置は普及していました。ところがオーストリアの著名な先生が「マイクロ波はただ加熱するだけだ。反応を加速させる効果などない。マジックは起きない」と報告したことをきっかけに、有機合成の世界からマイクロ波の研究が消えてしまったのです。

 しかし、私たちはマイクロ波に日の当たらない時期もコツコツと研究を続けてきました。そして最近、再びマイクロ波に日が当たり始めています。特に、気液・気固・固液・固固などの界面にマイクロ波が集中することが電磁界シミュレーションで明らかになるなど、マイクロ波の効果が明らかになりつつあり、世界中のマイクロ波研究者が盛り返しています。私としては、しつこく頑張ったかいがあったと痛快な気分です。

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