One Hour Interview
マイクロ・ナノバイオテクノロジーを駆使して、血管や筋肉組織をつくる
武田直也
医学と理工学を融合
東京女子医科大学の非常勤講師も兼務しておられますね。
早稲田大学に異動する以前には、東京女子医科大学の先端生命医科学研究所で助手を務めていました。この東京女子医科大学の研究所は、今、私たち早稲田大学がいるこの施設を共有して共同で活動しています。
早稲田と東京女子医科大学は人工心臓など医学と工学にまたがる学際的領域で長年にわたり協力と交流をしてきました。そして2008年に両大学による医理工融合研究教育拠点として東京女子医科大学・早稲田大学連携先端生命医科学研究教育施設「TWIns」が創設されたのです。この名称は東京女子医科大学のT、早稲田大学のW、そしてInstitution(研究施設)からとったものです。ここでは早稲田大学と東京女子医科大学が共同で科目を立て、両大学の教員が講義をし、両大学の学生が聴講し、それぞれの大学で単位認定されるケースもあります。共同でつくった大学院もあります。
改めてお聞きしますが、生命医科学とはどういう学問なのですか。
高分子化学とか分子細胞生物学などの確立した学術分野は、人々の共通認識に基づいてそれぞれこういう学問だと明確に定義できますが、生命医科学はそういう確立した分野にはなっていないと思います。ある意味、新語に近いといえるかもしれません。医療系へのアウトプットを志向した学術分野であり、それには基礎的なライフサイエンスだけでは不十分で、治療技術の開発やモノづくりなども必要になってきます。そこで、医学と理工学を融合させる形になったわけです。
新しい学問領域ということですか。
そうですね。生命医科学という名を冠した学科や学部は、その後いくつかできたようですが、こういう体制でいろいろな領域の人材を集めて始めたのは私たちの学科が最初です。
ここを卒業した人はアカデミア以外ではどういう分野に進むのでしょう。直接医療に進む人もいますか。
医師や看護師の資格が取れるわけではありませんから、これら医療従事者として医療の現場で活躍するというケースはありません。しかし、医療現場には医療機器開発の技術者が入り込んで医療従事者のサポートや機器機能のデータ収集をしているケースもあり、分子レベルの研究を主とする当学科の卒業生も、これと似たケースで医療の現場に関わる人が出てくると思います。私の研究室の卒業生にも、医療機器メーカーで医療機器開発に携わっていたり、バイオベンチャーで新しい治療技術の開発をリードしている人がいます。これらに加えて、化学系企業、製薬会社、あるいはコンサルティング会社など、かなり幅広い分野に進んでいます。