One Hour Interview
マイクロ・ナノバイオテクノロジーを駆使して、血管や筋肉組織をつくる
高分子バイオマテリアルを基材に生体組織を構築し、
再生医療や移植医療に適用する。
生命医科学の分野から武田直也さんは
そんな夢のある研究にチャレンジしている。
武田直也
早稲田大学
理工学術院先進理工学部生命医科学科教授
医療へのアウトプットを志向
早稲田大学先進理工学部の生命医科学とはどういう学科なのでしょうか。
ご存じのように早稲田大学には医学部がありません。しかしライフサイエンスという学問は、基礎研究だけでなく応用も見据えて進めることが大事です。そこで、医療へのアウトプットを志向した学科として2007年に生命医科学科が設置されました。現在、この学科には、工学系、理学系、そして医師免許を持った医学系など、異なるバックグラウンドを持った10人の専任教員がいて、それぞれの専門の融合を図りつつ、病気の原因解明や新たな医療技術開発を進めています。私は工学系の化学がバックグラウンドの教員ということになります。
経歴を拝見しましたが、経営学修士(MBA)の学位も持っていらっしゃる。化学の研究をされている方がMBAも持っているのは珍しくないですか。
2004年に東京女子医科大学から早稲田大学に異動してきたのですが、そのときは現職の学科はまだありませんでした。私はまず附置研究所の所属になったのですが、そこはさまざまな挑戦的なプログラムが行われた研究所でして、そのひとつにアカデミアにおける新しい領域を先導するトップ研究リーダーや企業における最高技術責任者(CTO)、ベンチャービジネスの起業家、産学官連携を先導する“目利き”などの人材育成を目指したものがありました。早稲田大学のそういうプロジェクトに採用されて、研究所所員の立場のまま早稲田大学大学院のMBAコースに通い、学位を取らせていただきました。こうして、組織をどうマネジメントし、研究のアウトプットをどう出していけばいいのか、それをどのように社会還元していくのか、そのようなさまざまな局面に対応し得るMBA人材を育成するというプロジェクトにより、私の同期では10人くらいがMBAの学位を取りました。
実際に組織のマネジメントに役立っていますか。
現在、20名足らずの研究室を主宰しており、小さいなりにもひとつの組織をマネジメントするにあたり役立っていることもあります。研究テーマを設定するうえで、学術的な意義に加えて応用された際の市場性を考えることもあります。意識がそれらの方向に向くことは大事なことだと思います。また、研究の第一線を退いて、大学のマネジメントの部門などで活躍している先生もいらっしゃいます。それぞれがうまくMBA取得で培った能力を生かしているのだと思います。