ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

複数の材料を多段階積層した高効率太陽電池開発に挑む

田辺克明

異分野の情報にもアンテナを張る

研究でブレークスルーが生まれるのはどういうときですか。

 他の分野で使われている技術を新たに持ち込むとか、違う分野同士の技術を融合させると、ブレークスルーが起きることが多いと思います。たぶんそれは私の研究に限らないことでしょう。私が提案した接合の方法は、もともとカリフォルニア工科大学の先生が持っていたアイデアがベースになっています。この先生は、太陽電池とは違う分野でそういう技術の組み合わせがあることを知り、それを太陽電池にも応用したらいいのではないかと思いついたそうです。

では、そういうブレークスルーを増やそうとするなら、いろいろな分野の情報に目配りしたほうがいいと?

 だから私は別の分野の学会に行ったり論文を読んだりしています。視野を広げることはとても大事だと思います。そういう意味で工学系の分野が集まっているこのキャンパス(京都大学桂キャンパス)はとてもいいですね。欲を言えば医学系とか薬学系の研究室もあるといいのですが…。

社会科学系の人ともコミュニケーションはあるのですか。

 残念ながら今のところありません。でも当然、それもあったほうがいいでしょう。私は核融合の研究もしているのですが、核と言うと危険だと思われてしまいます。実際にはクリーンでほぼ無尽蔵に得られる有望なエネルギーなのですが、基本的に私たちは口下手なのでそのことをうまく一般の人に伝えられていない面があると思います。私たちの努力不足もあるのでしょうが、そういう意味でも社会科学系の方たちとのコミュニケーションは必要ですね。

最後にこれからの抱負をお聞かせください。

 エネルギーの心配のない、人が安心して暮らせる社会の基盤づくりに少しでも貢献することです。環境への貢献ももちろんしたいと思います。

京都大学 工学研究科化学工学専攻准教授 田辺克明[たなべ・かつあき] 1978年生まれ、愛知県出身。東京大学工学部化学システム工学科卒。同修士課程修了後、カリフォルニア工科大学修士課程に留学し、応用物理を専攻。博士課程を修了した。東京大学ナノ量子情報エレクトロニクス研究機構特任助教、同特任准教授を経て2015年より現職。危険物取扱者、毒物劇物取扱責任者、電気主任技術者、アマチュア無線技士、エックス線作業主任者などの資格を持つ。イリオモテヤマネコ検定初級も。趣味は、将棋とテニス。休日は2歳の子どもの面倒を見て過ごすことが多い。「イクメンというほどではありませんが、まあまあ頑張っているほう」と言う。

「第34回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞」

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