One Hour Interview
複数の材料を多段階積層した高効率太陽電池開発に挑む
太陽光発電は再生可能エネルギーの中でも特に有望と考えられている。
だが、一段の普及にはコストの低減が不可欠。
新しい材料、新しい構造の太陽電池開発で、田辺克明さんはブレークスルーを目指す。
田辺克明
京都大学
工学研究科化学工学専攻准教授
寝る時間も削って勉強
経歴を拝見すると、東京大学で修士課程を修了された後、カリフォルニア工科大学の修士課程にお入りになっています。なぜ博士課程ではなかったのですか。
すべての大学がそうではないかもしれませんが、アメリカでは修士課程と博士課程がはっきり区切られているわけではなく、2年+3年の5年間でワンセットなのです。だからもう一度修士課程から始めたわけです。
なぜ、アメリカの大学に?
もともとアメリカの研究や教育に興味がありましたし、英語のスキルを磨きたいという気持ちもありました。アメリカの大学は授業料が高いことで知られていますが、理系の大学院は授業料が免除され、サラリーまで貰えるところが多いんです。もちろんその分厳しく、成績が悪いと辞めさせられることもありますが。アメリカでは化学ではなく応用物理を専攻しました。なじみのない分野でしかも講義は全部英語ですから、ダブルで大変でした。最初のうちは365日まったく休む暇なく、寝る時間も削って勉強しました。
化学から応用物理に変更したのはどうしてですか。
エネルギーと資源問題にずっと興味があり、太陽光発電を研究テーマにしています。この研究には材料の性質を調べたり合成をしたりするのに化学の知識が不可欠です。しかし電気を流す機器ですから、光と電子ということで量子力学や固体物理学も関わってきます。
その他にも光学などいろいろな知識が必要なテーマなので、電気や物理寄りのことも学んでおいたほうがいいと考えたからです。
化学のベースの上に物理も学べば、研究者としての強みになるという考えもあったのですか。
まさにそうですね。知識の幅が広ければそれだけより広いことが理解できますし、いろいろな観点からアイデアを生み出しやすくもなると思います。研究をより効率的に進められるようにもなり、研究の質とスピードが上がりました。