One Hour Interview
複数の材料を多段階積層した高効率太陽電池開発に挑む
田辺克明
10年後には効率60%を実現したい
接合の技術とともにどういう材料を使うかも重要になると思いますが、先生がお使いになっている材料は何ですか。
シリコンと化合物半導体です。化合物半導体はすごく薄くてもたくさんの太陽光を吸収する性質があります。化合物半導体にもいろいろ種類があり、希少なインジウムの半導体を使うとコストが高くなってしまいます。環境への負荷なども考慮して基本的にベースはシリコンにしています。
接合はどういう方法ですか。
加圧しながら加熱する極めてシンプルな方法です。ただ、接合する前に化学的な表面処理を施す必要があります。
その方法に行きつくまでが難しかったのですか。
ずいぶん試行錯誤しました。たとえば大気中に含まれている微粒子が接合面の表面に付着していると、接合の阻害要因になりますからそういう微粒子をいかに少なくするかとか。
そのためにクリーンルームを使う?
それもひとつの解決方法です。しかし企業の方から、クリーンルーム内ではない普通の環境でできるものがいいとお聞きし、いま私の研究室では普通の環境でも接合できるようになっています。大気中の微粒子は帯電しているため材料に付着しやすいので、電荷を中性化する化学的な薬液処理をするなどいろいろな工夫をしています。
変換効率はどれくらいまで高めることができるのでしょうか。
界面のロスを無視すれば、理論的には積層する材料が多いほど変換効率は高くなります。しかし今はまだ5積層にするとロスが多くなってしまいます。目標としては4積層で60%ですね。そうなると今市販されている太陽電池の3倍くらいの変換効率になり、同じ電気を得るために必要な面積は3分の1になります。このパネルなら一軒家の南側の屋根に敷き詰めるだけで、その家が使う電気をほぼ賄えるようになるはずです。 10年後くらいまでには60%にしたいと考えています。