One Hour Interview
複数の材料を多段階積層した高効率太陽電池開発に挑む
田辺克明
世界最高の変換効率を実現
コストは発電の効率とも関係してきそうですね。
はい。パネル面積当たりの発電量が2倍になれば、コストは2分の1になりますからね。発電効率を高めることは非常に重要な課題です。
従来の太陽電池は、1種類の化合物半導体を使ったものが主でした。ただ、材料にはそれぞれ得意とする光の波長領域があります。また太陽光は幅広い領域の波長を持っています。したがって材料が1種類だと、たくさんある波長の中のごく一部の光しか電気に変換できません。それに対して得意な波長領域がそれぞれ異なる材料を複数組み合わせることにより、より幅広い波長領域の太陽光を電気に変換できるようになります。
こうしたアイデア自体は以前からありました。ただ複数の材料を組み合わせた積層構造をつくるのが簡単ではありません。異なる材料同士が接合するところでどうしてもロスが生じてしまうのです。単純に材料を増やせば性能が上がるというものではないのですね。
そこで10年ほど前に新しい積層の仕方を提案して実証しました。それまでは3積層までは何とかなったものの、4積層以上になると界面のロスが大きくなり、変換効率が悪くなってしまっていたのですが、私の提案した方法だと4積層でも性能が上がるのです。3つの材料を組み合わせた太陽電池だと変換効率は41 %くらいが最高でしたが、私たちの提案した方法によりドイツの研究所が4積層で46~47%という世界最高の効率を実現しています。