One Hour Interview
新規性のある界面活性剤の分子設計から物性評価までを一手に担う
吉村倫一
アミノ酸と糖のハイブリッド型も
それはアミノ酸や糖を用いるという着想がよかったのですか、それともアミノ酸や糖を取り入れる技術がよかったのでしょうか。
両方だと思っています。ジェミニ型にしたことと、その構造にアミノ酸などの付加価値を加えたところに新規性があります。こういう研究はあまり例がありません。
もっとも界面活性剤を新規に合成する研究は、年々少なくなっているのが実情です。今、界面活性剤の合成を研究している大学は、日本で数校しかありません。20年前、私が界面活性剤の研究を始めた頃はもう少し多かったのですが…。
その間、界面活性剤の重要性が低下したというようなことはないのですか。
ありません。ただ、今は同じ化学でも生化学のほうが人気があるので、学生も研究者もそっちのほうに行ってしまうようです。実際、界面化学の研究室がなくなって、そのあとに生化学の研究室ができるというケースもありますから。
アミノ酸を入れるのは技術的に難しかったのでしょうか。
そうですね、簡単ではありませんでした。しかも、うまく入れ込むことはできても、その後、目的物と副生成物を単離するのが難しかったりしました。99%以上の純度を目指しているので、そこも時間がかかりました。少し前まではアミノ酸と糖をそれぞれ別個に研究していましたが、今は出発物に両方用いた、アミノ酸と糖のハイブリッド型界面活性剤の研究もしています。こういう研究は、文献では他に見当たりません。