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One Hour Interview

One Hour Interview

ゴムの強さの謎の解明に王手をかける

自動車のタイヤを始め、さまざまなシーンで使われているゴム。
だが、そのゴムの強さの謎は21世紀に至る研究でも解明できていなかった。
池田裕子さんはその解明に挑戦し、今まさに王手をかけようとしている。
はたしてゴム科学にパラダイムシフトは起きるのか……。

池田裕子

京都工芸繊維大学
分子化学系教授

物性と構造の相関を研究

ゴムというのはずいぶん昔から利用されてきたそうですね。

天然ゴム

 紀元前1500年頃から中南米で使われていました。メソアメリカ(現在のメキシコ)のオルメカ文明で、祭事や政治にかかわる道具として利用されたようです。オルメカはゴムを使う人の意味です。

工業的に利用されるようになったのはいつ頃からですか。

 18世紀には消しゴムやゴム引き布が製造されましたが、大きく進歩したのは178年前にグッドイヤーが加硫を発明してからです。ゴムに硫黄と鉛白を混ぜて加熱(加硫)するとゴムの弾性が広い温度範囲で安定して、ゴムの本格的な利用が可能になりました。そしてオーエンスレーガーがある種の有機薬品を加えるとその効果がさらに促進されることを見出し、加硫技術が工業的に使われるようになっていきました。その後、カーボンブラックを補強剤として充てんする技術も開発され、ゴムはさまざまな用途に使われるようになりました。

先生はなぜ、ゴムの研究をされるようになったのですか。

 1969年に山下晋三先生が京都大学から京都工芸繊維大学に移ってこられ、ゴムの研究室を開かれました。私は新しいウレタンゴムを化学合成し、人工血管や人工皮膚などの医用ゴム材料をつくる研究をしたくて山下研究室の14期生になりました。この研究ではかなりいいデータが出ていたのですが、医学部のない京都工芸繊維大学ではなかなか生体を扱う研究ができず、限界を感じていました。

 ただ、この研究で機能性ゴム材料における「機能」と「モルフォロジー」の相関が極めて重要であることを学び、私の研究も生体適合性に留まらない、ゴム物性と構造の相関に関する研究に広がっていったのです。

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