One Hour Interview
低環境負荷合成法によるナノ材料開発に挑む
横山 俊
ITOを超える性能
銅のナノワイヤをつくる研究の課題は何でしょうか。
低コストで耐酸化性を有する銅ナノワイヤを合成する方法と、ナノワイヤの表面および形状を制御する技術を開発することで、低温焼結性や高アスペクト比を有するナノワイヤができることは確認できています。ただ、ナノワイヤだけではなく、どうしてもナノパーティクルもできてしまったりします。ナノワイヤだけをつくる条件を確立することが当面の大きな課題です。
光透過率はどれくらいなのですか。
ITOの場合、少なくとも90%以上ありますから、銅ナノワイヤはそれ以上の透過率にする必要があります。ITOより透過率も導電性もよくて価格も安くないと、ITOにとって代わることはできないでしょう。今のところ、性能的にはITOに代替できるレベルまでほぼ到達していると思います。ただ、銅は酸化しやすいという問題もあります。その対策も考えないといけないので、越えなければならないハードルはまだまだたくさんあります。
酸化の問題はクリアできそうなのですか。
(やや間をおいて)銅ナノ粒子をつくるときも酸化の問題はありました。対策としては表面に何らかの有機物を付着させることで酸化を防ぐという方法が考えられますが、そうすると導電性能が低下してしまいます。
導電性を阻害せず、酸素を遠ざけるような方法はないか考えていますが、この問題はかなり難しいので、まずはナノワイヤを確実につくることのできる低環境負荷合成法の確立を優先させたいと思います。まだナノワイヤだけができるというレベルではないので、もう少し条件を詰める必要があります。