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One Hour Interview

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低環境負荷合成法によるナノ材料開発に挑む

地球環境問題が深刻化している中、エレクトロニクス分野でも、
低環境負荷・省エネルギーな方法によるデバイス形成が求められるようになってきている。そうした社会ニーズに対応し、横山 俊さんは新しい合成法や反応駆動力制御を使い、低環境負荷・低コストでナノ材料をつくる方法の開発に挑戦している。
すでに銅のナノワイヤ形成では一定の成果を上げつつある。

横山 俊

東北大学大学院
環境科学研究科 助教

最も読まれた論文に選出

環境にやさしい方法でナノ材料をつくることを研究されているそうですが、現状の方法はそれほど問題があるのですか。

 ここ数年、次世代技術として、インクや印刷技術を用いてデバイスを形成するプリンテッドエレクトロニクスが注目されています。この技術は省資源・省エネルギーというのがひとつの特徴で、生産効率を飛躍的に向上させることが可能です。

 ただ、この技術に不可欠なナノ粒子を合成する方法は、高温処理が必要だったり、希少で毒性のある薬品などを必要としたりするうえ、高コストでもあることが実用化の障害になっています。そうした問題を解決するのが、私の研究の大きなテーマです。

熱分解とは異なる反応で、ITO(酸化インジウムすず)を含む酸化物ナノ粒子の合成に成功され、2015年には米国の学会誌で最も読まれた論文に選出されたそうですね。

 「ACS NANO」の「Most Read Article」のことですね。「ACS NANO」はアメリカ化学会の学会誌です。こんな名誉なことはこれから先、もう二度とないと思いますが、実はこれ、オレゴン大学に留学していたときのことで、ナノ材料研究ではよく知られたオレゴン大の先生と日本企業の研究者との3人で執筆した論文なんです。

 エステル化反応を使い、低環境負荷で酸化物のナノ材料をつくることに成功したことが、大きな反響を呼びました。この先生はグリーンケミストリーを専門にされていて、環境によくない材料は使わないという方針を取っています。私もそれに触発されて、毒性や危険性のあるものは使わずにナノ粒子をつくる研究をするようになったんです。

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