ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

植物の高度利用で高付加価値機能性材料を開発する

竹井敏

企業に戻りたいとは思わない

企業で研究の仕事をされてから大学に転じてこられた方として、企業と大学の研究風土などの違いについてはどうお感じですか。

 本学に来てからは、情報を得る機会が企業勤めのときに比べて10分の1くらいに減ったような気がします。企業にいると、自分で情報を集めるだけでなく、企画部門などからどんどん情報が入ってきます。それに対して大学はちょっとタコツボ的なところがあるように感じます。情報があまり共有されていないのです。研究装置なども、研究室ごとに入れて、他の研究室と共同で使うということが少ないのではないでしょうか。そういうところは海外の大学も日本とあまり変わりがないと思います。これは何とかした方がいいですね。維持・修理費を負担する仕組みをつくれば解決できると思うのですが……。

 それと私は企業にいたということもありますし、機能性材料は実用化が近い領域なので、市場性とか実用性ということを考えながら研究をしています。でも多くの先生は、産業に役立つかどうかということは考えず、産業界のニーズ調査をせず、自分の興味のあるテーマを中心に研究しているように感じます。基礎的な研究は大学で非常に大切ですので、それを否定するつもりはありません。

 ノーベル賞を取るような基礎的な研究と、私たちのように企業に採用されて社会に還元されることを目指す研究とでは、テーマの選び方や研究に対するスタンスが違うのは当然のことです。ただ私は、自分で見つけたものでなくても大学にあるノウハウや原理は活用させてもらいますし、自分の研究は産業界のニーズに合わせながら、成果が出たら企業に「ドンドン マスマス」的に橋渡ししていこうと考えています。

企業に戻りたいとは思いませんか。

 それはないですね(笑)。本学は富山県がサポートしてくれていますし、事務局もしっかりしています。研究予算面でも恵まれている方だと思います。それに研究テーマから方法からすべて自分で決められるのですから、企業にいたときとはストレス度がまったく違いますよ。

富山県立大学 工学部 機械システム工学科 エコマテリアル工学講座 准教授 竹井敏[たけい・さとし]1973年、京都府出身。京都工芸繊維大学繊維学部高分子学科卒。京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科高分子学専攻博士前期課程修了。1998年、日産化学工業に入社し、中央研究所に勤務。その間、ベルギーの国際研究機関のIMECや米国のテキサス大学などに留学。また大阪大学大学院基礎工学研究科物質創成専攻博士後期課程を修了し、工学博士号を取得した。2010年3月、日産化学工業を退職し、同4月より現職。富山県立大学に来てから「子どもと遊ぶ時間ができた」という。研究で行き詰ったときは、キーとなる技術を持つ人と情報交換することにしている。

 「第33回松籟科学技術振興財団研究助成 受賞」

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