ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

植物の高度利用で高付加価値機能性材料を開発する

竹井敏

有機溶剤は一切使わずにすむ

具体的にどういう研究をされているのか、お聞かせください。

 ここでは2つ、お話しします。まずひとつ目は、先ほど触れた感光性のインク材料です。フォトマスクに形成された微小な回路などを樹脂などに転写する光リソグラフィ向けのナノパターニング材料ですね。こういう材料はこれまでその大半が石油由来のもので、有機溶剤を使っていました。現像液には、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド(TMAH)という強アルカリのものを使っていますが、これは目に入ると失明すると言われています。半導体製造装置メーカーなどは、安全性に十分配慮してつくっていますが、廃液の処理にもコストがかかりますし、環境的には決していいものとは言えません。TMAHは欧州の環境規制物質の候補にもなっています。

その石油由来の材料を植物由来でつくったということですね

 セルロースナノファイバーや糖鎖を使っています。糖鎖は水に溶けやすいのが特徴で、私の研究でもそこがキーポイントになっています。ちなみに富山県には「とやまナノテククラスター」という次世代ものづくりプログラムがあり、私のこの研究もこのプログラムに参加しています。

この場合、水に溶けやすいということにはどういう利点があるのですか。

 水でコートでき、水で現像できます。つまり、有機溶剤を一切使わないということです。ソルベントフリーのナノパターニング材料なのです。したがって環境に優しいし、廃液の特別な処理も不要ですからコスト的にも安くできるということです。すでに試作品もできています。

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