ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

植物の高度利用で高付加価値機能性材料を開発する

竹井敏

学生には必ず発表の場を与える

もうひとつの研究はどういうものですか。

 セルロースナノファイバーを使ったガス高透過性のモールド材料を開発しています。これは光ナノインプリント向けの材料です。光ナノインプリントは、基板に光硬化性ポリマーを塗布し、モールドを高圧で押し付けて紫外線を照射し、回路などを転写する微細加工技術です。この光ナノインプリントで使うモールドは金属や石英製が多いのですが、こうした材料はガス透過性がありません。

 そのため大面積のものをプレス加工するとき、空気が入っていると抜けないので、それが原因の成型不良が起きることもあります。エンボス・射出成型でも同じような問題があります。この問題を解決するため多孔質の金属モールドを開発した企業がありますが、私たちはセルロースナノファイバーを使っています。このモールドだと、コンパウンドに揮発性溶剤も使うことができます。この開発も、先ほどお話しした「とやまナノテククラスター」で、植物の高度利用研究として採択されています。

モールド材としての硬度や耐久性に問題はありませんか。

 セルロースナノファイバーは金属の代わりになるくらいの硬度や開発品耐久性を持っていますから、大丈夫です。この開発は、種をまいて芽が出て、葉っぱが出てきたくらいの段階です。このタイミングで特許を書き、プロジェクトとしての期間はあと2年半ですが、それまでの間に企業に譲渡しようと思っています。といっても、企業と駆け引きをして、特許を高額で売ろうという気はまったくありません。

 私も教員ですから、これで利益が欲しいのではありません。社会に貢献できればいいので、この研究に興味がある企業なら、安くライセンスするつもりです。我が国のより多くの企業に使っていただきたいです。

もう少し研究を発展させてから譲渡するということですか。

 私の所属する機械システム工学科では、修士の学生には対外的な発表の機会を必ずつくるようにしています。これはとても重要なことで、大学で1本特許を書いても、周辺も押えないとあまり実効性はありません。しかしそれには時間がかかり、それを待っていたら学生は卒業してしまいます。ですからそこは企業と相談する必要もありますが、学生に発表をさせて、他の先生や企業の意見も聞きながら、自分の研究にしっかり向き合い、次の研究サイクルをどう設定していくのか考えるように指導しています。だから私の研究室では、国際学会に出て英語で発表しなさいと学生には言っているんです。

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