One Hour Interview
植物の高度利用で高付加価値機能性材料を開発する
竹井敏
実用化より実需化を狙いたい
性能的な評価は?
波長が365ナノメートルと比較的低エネルギーの光で、線幅300ナノメートルの高解像度を実現しています。水溶性のレジスト材料はこれまでにもありましたが、性能的には私たちが開発した材料の方が上回っています。ただ、残念ながらまだ石油由来の材料に比べると十分高いというレベルではありません。そこは改良の必要があるというのが現状です。100ナノメートル以下のパターンは厳しいですが、200~300ナノメートルの限界現像度でいいデバイスなら使えます。富山県には医薬品や化粧品の容器をつくる産業が集積しており、そういうものの加工であれば十分使えるでしょう。医工連携で新しい用途を開発することがこれからは大切になると考えています。
本学では来年度から医薬品工学科が新設されます。私はカテーテルや医療デバイスなど患部で使われる医療機器の開発にもこのナノパターニング材料は使えると考えています。
この研究ではどういうところにご苦労されましたか。
糖鎖を水でコートできるように、基板との表面エネルギーとか接触角を調整できるように側鎖の化合物を最適化するのが難しかったですね。糖鎖をそのまま使うと付加価値の高いものはできません。だからそこは化学・物理処理しています。そうしたところの技術や知見は日産化学で身に付けたものが役に立っています。試作品もできていますし、来年あたり、発表できるかもしれません。
実用化が近いということですか。
そうですね。でも、企業で働いていたものとしては、実需化まで行って欲しいと思っています。大学の先生には、企業と共同研究をして、成果を企業に受け渡したら実用化だとおっしゃる方がいらっしゃいます。でも、企業はお付き合いでサンプル評価をすることもあります。実際、そのあと製造ラインには乗らないというケースもよくあります。
企業が事業化して初めて実用化と言えるのではないでしょうか。私の理想としては、富山県の産業に貢献できるような実需化まで行きたいですね。それなら地域の活性化にもつながりますから。