ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

フレキシブル高感度センサーで豊かな社会づくりに貢献したい

関谷毅

材料循環型エレクトロニクスを提案

そういうセンサーが実用化され、IoT社会を実現すると、ものすごい量のセンサーが必要になりますね。資源的には問題ないのですか。

 医療機器として使うとすれば、衛生上の問題もあり、少なくとも肌に貼り付く電極部分などは使い捨てにせざるを得ないと思います。それ以外の生活環境にもセンサーが入り込むとなると、それを使い終えた後、膨大な量の廃棄物が生まれる可能性は確かにあります。そこで私たちは、低エネルギーで分解でき、再構築も可能な生分解性プラスチックフィルムを高機能化し、センサーに活用する研究も進めています。生分解性プラスチックは表面の平坦性が低いことや環境耐久性がないことなどからこれまでエレクトロニクスの分野ではほとんど使われてきませんでした。私たちは自己組織化単分子膜によりそのプラスチック表面を修飾し、平坦化を実現するなどして、地下資源に頼らない材料循環型エレクトロニクスの概念を創出したいと考えています。

そうした研究の論文は「ネイチャー」や「サイエンス」にも掲載されましたね。2014年にはトムソン・ロイターによる「高被引用研究者」にも選出されました。

 研究者の論文の価値判断のひとつは、どれだけ引用されるかであると考えています。トムソン・ロイターによるその選出は、21の全学術分野を対象に、10年間の引用数をもとにして決めたと聞いています。つまり、この10年間で影響力のある研究者に選んでいただいたということになります。たくさんの研究者に私の論文を読んでいただいたということですから、これはとてもうれしかったですね。

 日本は超高齢社会です。でも、寝たきりの寿命が長くなるのでは、介護する側もされる側も大変ですし、社会的コストも増大する一方です。脳の状態をいち早く知ることができれば、認知症も早期に発見でき、寝たきりや介護が必要になる時期を遅らせることができるかもしれません。そういう社会の実現に貢献することをモチベーションに、これからも異分野で活躍しておられるいろいろな先生方、研究者と連携して研究を進めていきたいと思っています。

大阪大学 産業科学研究所 先進電子デバイス研究分野 教授 関谷毅[せきたに・つよし]1977年、兵庫県出身。 大阪大学基礎工学部物性物理工学科卒業。東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻博士課程修了。工学博士。東京大学大学院工学研究科量子相エレクトロニクス研究センター助手、助教、その後、東京大学大学院工学研究科電気系工学専攻助教、講師、准教授を経て2014年4月から現職。文部科学大臣表彰若手科学者賞、日本学術振興会賞など受賞歴多数。 2014年にはトムソン・ロイターによる「高被引用研究者」(世界で影響力を持つ研究者)にも選出された。中学時代には野球部と駅伝部を掛け持ちしていたと言う。

「第33回松籟科学技術振興財団研究助成受賞」

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