ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

フレキシブル高感度センサーで豊かな社会づくりに貢献したい

関谷毅

コンクリートの劣化を検知する

フレキシブルなセンサーの研究をされているということですが、もう少し詳しくお話しいただけますか。

 今、Internet of Things(IoT:モノのインターネット)という考え方が注目されていますね。機械とかいろいろなものをインターネットでつないで最適化したり新しい価値を創出したりするのがIoTです。私も以前から、アンビエントエレクトロニクス(環境エレクトロニクス)という名前で、同じようなことを学会や論文で紹介していました。ここでもし、我々の住む実空間のセンシングを担うのがシリコンLSIセンサーだとしたら、コスト的に見合わないと思ったんです。IoTというのは実空間をつなぐわけで、膨大な量のシリコンLSIセンサーが必要になり、それを広大な実空間に隈なく展開しなければならないからです。シリコンLSIは非常に優れたデバイスですが、硬いので曲げたりできないことと、大面積に展開するとコストが合わないという2つの弱点があります。だからそこを新しいテクノロジーでカバーする必要があります。

それがフレキシブルなセンサーだと。

 分かりやすい例をひとつお話しすると、いま日本ではビルや高速道路などの構造物に使われているコンクリートの20%は、建設されてから50年以上が経過しています。コンクリート構造物は通常は100年以上耐久性を持つ技術ですが、日本は地震が多い国であること、沿岸部に都市が広がっており塩害が起きやすいこと、昨今の酸性雨やNoX(窒素酸化物)により酸性環境が広がっていることからコンクリートが劣化しやすい状況にあります。コンクリートが劣化することで保守管理に大きなコストと時間がかかっています。20年後には7割が劣化(老朽化)するとも言われています。そのときすべてのコンクリートを調べるために打音検査しているわけにはいきません。そこで私たちが開発したシート状のセンサーをコンクリートに貼り、信号を検出してひずみや圧力などをセンシングする。そうすればコンクリートの状態がいつでも分かるようになり、壊れる前に改修工事などを行えるようにもなります。コンクリートの改修時期を人ではなくセンサーが知らせる。それがスマートインフラです。

コンクリートからどういう信号が出てくるのですか。

 割れれば振動が起きますし、ひずみが出れば変位が起き、抵抗の変化が生じます。そういう信号を検出し、なおかつそれが何を意味するのかを判断する情報処理の研究もしています。そうすれば、こういう信号が出たら何年後にはコンクリートが割れてしまうというようなことが分かるようになるわけです。

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