One Hour Interview
有機合成の手法を駆使してアルツハイマー病やHIVの治療薬開発を目指す
今野博行
突然結果が出てくる面白さ
評価の方法の見通しはいかがですか?
これもなかなか難しいですね。以前、ある大手医薬品メーカーが開発した薬剤があります。エイズの治療薬になると期待されていたのですが、臨床研究の最後の段階で毒性が出たために発売されませんでした。
ただ、エイズウイルスに効果があることは確かなので、この薬剤に蛍光物質をつけて評価する方法を検討しているところです。
そもそもなぜこういう研究をされるようになったのですか?
数学が好きだったので理系に進学しました。数学科にいきたいと思っていたくらいなのですが、一方で数学という学問には壁も感じていました。数学向きの人と化学向きの人では素養が違うと思います。
数学は理詰めで化学は発想が大事という感じですか?
化学にも理詰めのところはありますが、もうちょっと緩い感じがします。ある程度努力をしていると、何かよく分からないところから突然結果が出てくるとか、そういうことがあります。
大学の講義で、「自分たちが創造した化合物が市場に出回るとかプラントで大量につくられるということの感動はすごい。まさに無から有を生み出すのが合成化学だ」と熱く語る先生がいて、それを聞いて自分も有機合成に進もうと思ったんです。だから大学ではずっと有機合成化学を専攻していました。