ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

有機合成の手法を駆使してアルツハイマー病やHIVの治療薬開発を目指す

今野博行

現実味が高い試薬の開発

アルツハイマー病の治療薬がいよいよできるのですか?

 そう簡単ではありません。次は動物実験を考えていて、あるベンチャー企業との協力体制もすでにできていますが、正直言うとやってみないと分からないところもあります。

 ただひとつ、面白い結果が出ています。これとよく似た化合物で、毒性が出るものに特異的に結合して蛍光を発するものを見つけたのです。この化合物を使った反応を利用すれば、たとえば血液を1、2滴採取して認知症かどうか判断できる試薬として使えるかもしれません。治療薬よりはこちらの方が早いかもしれません。

研究が順調に進むと仮定したら、試薬はいつ頃できるのでしょう。

 ウーン……。今のところはとてもいいデータばかり出ています。学生に実験の指示をすると、だいたいうまくいきます。あくまでも、

 今のところは、ですよ。これからきっと何か大きな問題が出てくるでしょう。

 当たり前のことですが、血液の中にはいろいろなタンパク質が入っています。その数はざっと数千種類ともいわれています。その中でアミロイドβだけに反応するものを見つけないといけないわけですが、血中タンパク質をすべてチェックするのは難しい。どこまでチェックするかという問題になると思いますが、まだまだ時間はかかりそうです。

どれくらいですか?

 根気強くやってみようと思います。もちろん数年たって結局ダメだったという結果になることも十分ありえます。試薬は人間の体の中に入れるものではありませんから、臨床研究は必要ありませんし、治療薬に比べればハードルはそれほど高くありません。数年後に試薬が市場に出ている可能性があるかもしれません。それを目指すのが現実的ですし、僕も期待しています。

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