ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

有機合成の手法を駆使してアルツハイマー病やHIVの治療薬開発を目指す

認知症の半数以上を占めるといわれるアルツハイマー病。
超高齢社会を迎えている日本にとって大きな問題だが、今野博行さんはその治療薬の開発に挑んでいる。
まだ成否は不明だが、動物実験を準備する段階まで研究が進んできている。
アルツハイマー病になっているかどうか、血液で診断する試薬の開発や、HIV治療薬の開発にもトライしている。
早ければ数年後には試薬が実用化される可能性もある。開発に成功すれば、人類にとってはまさに朗報となるだろう。

今野博行

山形大学大学院
理工学研究科バイオ化学工学専攻
准教授

タンパク質の動きを阻害する

アルツハイマー病の治療薬の研究をされているとお聞きしました。他人事ではないのでぜひ詳しくお話しください。

 タンパク質の動きを阻害する薬剤の研究をしています。海洋生物や植物などに含まれる天然物やペプチドライブラリーなどから活性成分を取り出して化学合成し、どれだけ効くか調べています。

タンパク質がかかわる病気ということですか?

 実は世の中の病気はほとんどタンパク質がかかわっているんです。突き詰めていくと必ずといっていいほどタンパク質に行き当たります。だからタンパク質の動きを止めるのが一番有効なのです。薬剤もほとんどがそのようにつくられています。

 アルツハイマー病の場合、原因がだんだん分かってきています。脳の神経細胞の膜の表面には、アミロイド前駆体タンパク質というタンパク質が突き刺さるような形で存在しています。この膜タンパク質は通常、神経の成長と修復に重要な役割を果たしているのですが、そこから生成するアミロイドβが高度に凝集すると神経細胞を破壊し脳の機能低下を招くと考えられています。これがアルツハイマー病の基本的なメカニズムです。

 よってアミロイドβが頭の中に蓄積しないようにすれば、アルツハイマー病になるのを防げると考えられるのです。

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