One Hour Interview
有機合成の手法を駆使してアルツハイマー病やHIVの治療薬開発を目指す
今野博行
なぜ歳をとると発症しやすくなるのか?
若年性アルツハイマーもありますが、なぜ歳をとるとアルツハイマー病になるのでしょうか?
脳の神経細胞には、βセクレターゼ、γセクレターゼ、αセクレターゼという酵素が存在しています。正常な状態のときはαとγが一緒に動いていて、アミロイドβを生成しないので毒性も出ません。ただしこれの働きはよく分かっていません。
しかし歳をとってくるとαセクレターゼの力が落ちてきて、βセクレターゼとγセクレターゼがアミロイド前駆体タンパク質を切断してしまうのです。その力関係のせめぎ合いがどうやら40歳代くらいから逆転するようです。
アミロイドβは20年くらいかけて蓄積しますから、60歳代になるとアルツハイマー病を発症しやすくなるのでしょう。僕は今、蓄積が始まった頃かもしれません(苦笑)。
HIV(ヒト免疫不全ウイルス=エイズ)の治療薬も研究されているそうですね。これもタンパク質と関係があるのですか?
あります。HIVはウイルスが原因の病気ですが、細胞の膜表面にあるCD4とCCR5という2つのタンパク質を使ってウイルスが免疫細胞の中に入り込むのです。したがってこれらのタンパク質を阻害すれば、ウイルスが細胞に入れなくなります。
ただ、実際に効く薬はほとんど見つかっていません。それにはいくつかの理由がありますが、ひとつは、細胞表面に出ているタンパク質を評価するのが難しいからです。だからまず評価の方法を考える必要があります。もちろん薬剤の研究もしています。