ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

史上初の有機系二次元トポロジカル絶縁体の創成にチャレンジ

坂本良太

実証に必要な4課題

その後、ユタ大学の先生とは会われましたか。

 2014年の3月、Feng Liu先生に渡米してお会いしました。物理学会ではよく知られた先生で、僕たちはこの方にヒントとチャンスをもらったわけです。それにしてもアメリカはすごいですね。日本にもトポロジカル絶縁体の研究をしている人はいるのですが、僕たちの論文に対する反応はありませんでした。アメリカの研究者はひとつの研究を徹底的に掘り下げますし、新しい境界領域にも積極的に飛び込んでいきます。そこは日本も学ばないといけないと思います。ジチオレンナノシートが、トポロジカル絶縁体であることが実証できれば面白いと、ワクワクしてきました。松籟財団に助成をお願いしたのも、この実証をするためなのです。

どうすれば実証できるのでしょう。

 酸化状態(フェルミレベル)の制御、角度分解光電子分光(ARPES)によるバンド構造の可視化、走査トンネル分光(STS)によるエッジ状態の観察、量子スピンホール伝導の観測などが必要になります。最初の2つについてはすでに少し着手しています。

ますます難しくなってきました(苦笑)。ひとつずつ、簡単に説明していただけますか。まず酸化状態の制御とは?

 電子が存在することのできる最大のエネルギーをフェルミレベルといいます。導電性などの物性は基本的に電子の状態で決まりますから、これを知るためにバンド計算という手法があります。

 でも、バンド計算というのはあくまでも理論的な予測なので、やはり実測が必要です。それが2番目の、ARPESによるバンド構造の可視化です。これはかなり物理学寄りの測定技術が必要なので、物理の先生と共同研究で取り組んでいます。

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