One Hour Interview
史上初の有機系二次元トポロジカル絶縁体の創成にチャレンジ
坂本良太
世界で初めて導電性を確認
ボトムアップ型のナノシートはすでにつくれているのですか。
はい、ジピリン金属錯体ナノシートなど、複数のボトムアップ型ナノシートの合成に成功しています。特にベンゼンヘキサチオールと金属塩の酢酸ニッケルを気液界面錯形成法でつくったジチオレンナノシートは、導電性が極めて高いことを実験で確認しています。導電性の測定には何層も重ねた厚いシートを用いましたが、本質的にナノシートに導電性があるのは間違いありません。ボトムアップ型で導電性を示したのはこれが世界で初めてです。まだ大きな面積のシートはつくれていませんが、高い導電性を持っていますから、エレクトロニクスの材料として使えるということです。
これまでにいろいろな研究者が挑戦してもできなかったのに、先生が成功したのはどうしてなのでしょう。
設計が優れていたという自負はあります。合成法も特徴的です。ベンゼンヘキサチオールは有機物なので、油には溶けますが、水には溶けません。酢酸ニッケルは逆に水には溶けますが、油には溶けません。だからベンゼンヘキサチオールを油に溶かし、酢酸ニッケルを水に溶かすと混ざらずに二層分離します。そのとき界面で反応してできる膜がナノシートです。
世界で初めてというのはすごいですね。
2013年に論文を発表しました。日本ではあまり反応がなかったのですが、3カ月くらい経ったとき、米国のユタ大学のFeng Liu先生からメールが来ました。僕たちがつくったジチオレンナノシートはトポロジカル絶縁体の可能性がある。面白そうな研究だから頑張れという内容のメールでした。実はそのとき、トポロジカル絶縁体については何も知らなくて、「何、それ?」という感じでした(笑)。