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One Hour Interview

One Hour Interview

史上初の有機系二次元トポロジカル絶縁体の創成にチャレンジ

導電性を示すボトムアップ型ナノシートの創成に世界で初めて成功したのが2013年。
そこから予想外の展開が広がってきた。
そのナノシートが、史上初の有機系二次元トポロジカル絶縁体である可能性が高まってきたのだ。
それが実証されれば、世界中の物理・化学界に大きなインパクトを与えることも予想される。

坂本良太

東京大学
大学院理学系研究科化学専攻 助教

化学合成でつくるナノシート

研究テーマのひとつにあげられているナノシートとは、どういうものなのでしょうか。

 簡単に言うと、究極的な厚さが単原子層に達する二次元高分子のことです。厚さはナノメートルオーダーなのですが、横方向のサイズはその数百倍という異方性を持っています。電子材料として使うと、素子が劇的に小型化したり省電力化したりする可能性があることから、注目されている新規ナノ材料です。ただ、今はまさに基礎研究と応用研究の狭間の段階で、実用化はされていません。

先生はどういうナノシートを研究されているのですか。

 グラフェンのような結晶性層状化合物を、単層になるまで剥離してつくるトップダウン型のナノシートが世界的には主流です。でもこれは微細加工技術のような物理学的なアプローチですから、化学者としてはあまり面白くない(笑)。だから僕は有機分子や金属原子などの構成要素からナノシートをつくっていく方法をとっています。これをボトムアップ型のナノシートと呼んでいます。要は化学合成でつくるということです。化学者は分子を取り扱うのが得意ですからね。

トップダウン型とボトムアップ型とでは特性に違いがあるのですか。

 トップダウン型は特性も優れていて、研究者も多く、論文も数多く出されています。ただ、基本的には無機系の材料で、いろいろな制約があります。それに対してボトムアップ型は合成化学を駆使することで、有機物をも組み込むことが可能で、自由度が高いという特性があります。しかしボトムアップ型の研究はまだ8年くらいの歴史しかないので、研究者も論文の数も少なく、物性や応用展開について明らかにしたという報告はありません。基礎化学的には重要なテーマですが、何に使えるのか誰も示せていないのです。だからこそボトムアップ型で機能性材料として使える物性などを示せば評価されるし、産業界にも興味を持ってもらえると思います。

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