One Hour Interview
遺伝子組み換えシアノバクテリアによるエタノール生産を目指す
得平茂樹
本物と偽物のビタミンB12
実際にエタノールをつくることに成功しているのですか。
スピルリナは今、工業的に利用されている唯一のシアノバクテリアで、細胞の中に多量のでんぷんを蓄えています。それを利用しようという研究はここ数年でずいぶん進捗し、エタノールをつくり出した研究グループもあり、トウモロコシと同じくらいの量のエタノールをつくれるとした論文も発表されています。トウモロコシと同程度のコストでスピルリナを培養することができれば、トウモロコシに代わってスピルリナでバイオ燃料をつくる道が開けるはずです。ただ残念ながら、コストがまだトウモロコシのレベルには及んでいません。
いかに低コストでスピルリナを培養するかということが課題なのですね。
それだけとは限りません。でんぷん以外の部分をもっと活用して付加価値を上げれば、培養のコストがトウモロコシより高くてもペイできるようになると考えられます。そこで私は、スピルリナからでんぷんを抽出したあとの残渣から、ビタミンを抽出することを提案しているのです。
スピルリナが栄養補助食品の原料に使われているのは、スピルリナがいろいろなビタミンをつくるからでもあります。地球上でビタミンB12をつくっているのは全てバクテリアだと言われていますが、スピルリナもビタミンB12をたくさんつくっています。ところがよくよく調べると、スピルリナがつくっているのは人間が利用できる形のビタミンB12ではないことが分かってしまったのです。スピルリナがつくっているのは、いわば偽のビタミンB12です。