ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

遺伝子組み換えシアノバクテリアによるエタノール生産を目指す

遺伝子組み換え技術を用いて、シアノバクテリアに二酸化炭素から
でんぷんとビタミンB12をつくらせるのが、目下の研究の目標。
でんぷんはバイオエタノールの原料として使われることが想定されている。
トウモロコシのように広い耕作地を必要としないシアノバクテリアでエタノールが
つくれるようになれば、エネルギー問題に大きく貢献することは間違いない。

得平茂樹

首都大学東京大学院
理工学研究科 生命科学専攻
准教授

光合成をするシアノバクテリア

今回、松籟財団の助成を受けられたそうですが、助成対象となったのはどういう研究でしょうか。

 シアノバクテリアという微生物の遺伝子を変換して、でんぷんとビタミンB12をつくらせるようにするのが研究の目的です。でんぷんはエタノールの原料になります。つまり、微生物を使ってバイオ燃料を生産できるようになるということです。

シアノバクテリアを使うのはなぜですか。

 シアノバクテリアは植物と同じように光合成の能力を持っています。30億年前、シアノバクテリアが光合成を始めたことで、大気中の酸素がつくられたと言われています。しかも、シアノバクテリアの光合成能力は植物よりも高く、光合成能力が高いということは、より多くの二酸化炭素が固定できるわけで、いろいろなものをより多くつくれるというメリットがあります。これがひとつ。

 シアノバクテリアを使うもうひとつの理由は、水の中で生きるバクテリアなので、育てるのに耕作地は必要ないということです。食料をつくるのに必要な耕作地を、燃料をつくるために奪わなくてすむ。食料と競合しないということですね。

スピルリナは藍藻の一種で細胞が集まって棒状の群体をつくり、幅5-8μm、長さ300-500μmほどの「らせん形」をした濃緑色の単細胞微細藻類。

食料として生産していたトウモロコシからバイオエタノールを生産したために、食料の供給が減ったことが問題になりましたが、この微生物を使えばそういう問題は生じないということですね。

 シアノバクテリアは数千種類あると言われていますが、私はその中でスピルリナという種類を使っています。もともとアフリカや中南米の湖に多く生息していて、現地では貴重なタンパク源としてかなり前から食用に摂取されていました。塩濃度の高い水の中や高アルカリの水中でも育つのが特徴で、湖の中ではほとんど独占種のような状態になります。そういうことから工業的に利用しやすいと考えられ、最初に大量培養を始めたのは日本の企業だと聞いています。今でも栄養補助食品やビタミン剤などに原料として使われています。シアノバクテリアは緑と青の色素を持っていて、スピルリナの青い色素は「ガリガリ君」のソーダ味に使われていますよ。

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