ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

世界で初めて緑藻で植物由来の成分をつくることに成功

村中俊哉

微細藻類でアビエチン酸を合成

ハリマ化成と共同で研究されているとお聞きしましたが、それはどういうテーマなのですか。

松やにの成分、ロジン

 微細な藻類を使って、松やにの成分であるロジンのアビエチン酸をつくる研究です。アビエチン酸を酵母でつくる研究は以前からありますが、光のエネルギーを使って栄養をつくることができる微細藻類を利用できるのではないかと考えていたときに、ハリマさんからのお話しがちょうどいいタイミングで来たのです。20万種類の低分子化合物は、ポリフェノールなどのフェノリクス、アルカロイド、そしてテルペノイドという大きく3つのグループに分けることができます。私たちはテルペノイドに関わる遺伝子のエキスパートと自負しておりますが、松やにはまさにそのテルペノイドの1種です。それで声をかけていただけたのでしょう。

その研究についてもう少し詳しく教えてください。

クラミドモナス。長さ数十ミクロンの微細藻類。2本の鞭毛をつかって水中を泳ぐ。(名古屋大学遺伝子実験施設提供)

 テルペノイドは炭素の数が5の倍数になっていて、そこで分類できます。5×2で10、これをモノテルペンといいます。たとえばはっかのメンソールがそうです。抗マラリア薬のアルテミシニンは5×3の15、ジテルペンは5×4の20、トリテルペンは5×6の30です。5×8のテトラテルペンはニンジンの色素として知られているカロチノイドがあります。

 松やにの成分は5×4のジテルペンに入ります。私たちは炭素数15や30のものをメインに研究していました。微細藻類の緑藻の場合、カロチノイドあるいはクロロフィルがたくさんできるので、もともとこういうものをたくさんつくる能力は持っていると考えられます。その意味でジテルペンはいいターゲットなのです。松やにのアビエチン酸をつくる遺伝子は二つ必要で、それを酵母に入れて生産する研究をしているところはありましたが、緑藻での生産は誰もしていませんでした。だからチャレンジングだけどやってみようと思ったわけです。

うまくいったのですか。

クラミドモナスの寒天培地での培養。

 2012年末から2013年の初めにかけて、世界に先駆けて緑藻で植物由来の成分をつくることに成功しました。遺伝子組み換えが可能な緑藻のクラミドモナスを使い、葉緑体に遺伝子を入れ込んでいます。葉緑体にある遺伝子は、基になる遺伝子のDNAの配列が偏っています。そのため葉緑体でうまく働くように人工的に合成した遺伝子を入れ込みました。まだ論文は出していませんが、2013年の夏には特許も出願し、学会でも発表しました。

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