ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

世界で初めて緑藻で植物由来の成分をつくることに成功

村中俊哉

早ければ4~5年で産業生産も

遺伝子を取ってくるのは難しいのですか。

 遺伝子はA、T、G、Cの4つの塩基の並びですが、技術が進歩したのでどういう並びなのか、その配列を読み解くことは難しくありません。しかし、その遺伝子が持っている機能を見つけ出すのは難しい。そこにこの研究のひとつの醍醐味があります。塩基配列が転写、翻訳されてタンパク質になるのですが、どういうタンパク質ができるのかは、バイオインフォマティクスの力を使ってある程度絞り込むことができます。絞り込んだ後にまたいくつかのテクニックを使ってさらに絞り込んでいく。それで最終的にその機能を調べる。そういう展開になります。最終的には酵母とか大腸菌でその遺伝子を発現させてみるという方法もあります。

こちらの研究室でつくってすでに利用している化合物はあるのでしょうか?

 産業用までいっているものは残念ながらまだありません。グリチルリチンの生理活性成分で抗炎症作用があるグリチルレチン酸を酵母でつくることには成功しています。今は産業用を目指してその生産量を上げる技術をある企業と共同で開発しているところです。

 10年くらい前までは、植物が生産する低分子の化合物を酵母でつくることはまだまだ先の話とされていました。しかし、アメリカのベンチャー企業はマラリアの薬に使われる植物由来成分であるアルテミシニンの原料となる物質を酵母でリッターあたり数十グラムつくることに成功しています。私たちのグリチルレチン酸も、決して夢物語ではなく、近い将来産業用レベルでつくれるようになると思います。早ければ4~5年でできるのではないでしょうか。

こういう研究をいつからされているのですか。

 私自身はもともと植物の組織培養を研究していて、学生時代の1980年代から植物がつくりだす有用な物質を植物の細胞につくらせる研究をしていました。今は、テルペノイドという一群の化合物やグリチルリチンなどを、酵母などの微生物に入れてつくるという方法と、作物に入れてつくるという2本立てで研究しています。

植物は有用資源の宝庫。『PLANT CELL』をはじめ、村中さんらの研究が表紙を飾った研究雑誌。

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