ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

ナノレベルでの表面科学で多彩な研究テーマに取り組む

吉村雅満

カーボンナノチューブも研究対象

カーボンナノチューブ(中央の細線)を操る

その針はどれくらいの太さなのでしょう。

 先端の太さは原子のレベルです。材質は金属で、エッチングで化学的に研磨します。この針の太さと構造がとても大事なのです。

こちらの研究室にはカーボンナノチューブ(CNT)を合成する装置もあるとお聞きしました。

 SPMの針をCNTでつくる研究をするため、10年くらい前に購入しました。CNTは細く、強度的にも強くて摩耗しにくいから、それを使ってナノ物質の電気物性や摩擦力を測定すれば、分析のブレークスルーになると考えたのです。CNT合成装置でCNTを成長させ、針の先端だけに触媒金属粒子をつけるテクニックも開発しています。これにより、分解能の向上はもちろん、触媒粒子を工夫することで磁性針の開発も可能となるなど大きなポテンシャルがあります。

 これに関連して最近は、ラマン分光法の研究もしています。TERS(Tip-enhanced Raman Spectroscopy)というテクニックで、数ナノメートル進行しただけで消えてしまう光を使います。この光は針の直下だけに強い電場をつくります。そうすると成長しているCNTが非常に鮮明に見えるようになります。ただ、一番難しいのが、やはり針なのです。

その場合、針の材質は何がいいのですか。

 銀がいいのですが、銀は酸化しやすいという難点があります。だから針の先端にいかにナノサイズの銀の粒子を保持するかが重要になります。そこで私たちはCNTの中に銀を入れる技術を開発しています。CNTに包まれている構造なので、銀の酸化を防げるからです。CNTの厚みはせいぜい1ナノメートルくらいですね。この針ができると画期的な分解能を持つSPMができるのではないかと期待しています。まだもう1年くらいはかかりそうですが、非常に安定した針なので、これは世界標準探針として売れると思います。

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