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One Hour Interview

One Hour Interview

ナノレベルでの表面科学で多彩な研究テーマに取り組む

顕微鏡の開発でスタートした吉村雅満さんの研究は今、物質合成や電子構造計測など多様な世界に広がっている。
「ナノレベルでは、物理や化学の区別はない」と、吉村さんは明言する。
それどころか吉村さんたちの研究はライフサイエンスの領域にまで越境している。
ナノ(10億分の1)という極小の世界を掘り進めていくと、あらゆる学問領域が融合してくるのかもしれない。

吉村雅満

豊田工業大学大学院
工学研究科 表面科学研究室 教授

悪魔と仲よくすることにした

先生の研究室は「表面科学研究室」という名称ですが、表面科学とはどういう学問なのでしょう。

 物質がナノメートルサイズに近づくと、全体積に占める表面積の割合が大きくなり、表面の構造や性質がその物質の機能を左右するようになってきます。だから表面の構造を正確に見て、解析することがとても大事になります。表面を制御することで新しい機能を持つ物質やデバイスをつくれるようにもなります。それが表面科学ということです。北欧の人は背が高いですよね。あれは表面積の割合を少なくして、熱を取られないようにしているのです。寒い地域ですからね。まあこれは本当かどうか分かりませんが(笑)。

もともとは顕微鏡の開発からスタートされたそうですね。

 トンネル顕微鏡が開発されたのは1982年のことです。当時、私は修士の学生で、原子とか分子を見る顕微鏡を開発する研究に携わっていましたが、ものすごいインパクトを受けました。スイスの物理学者のW・パウリは「固体は神が創り給うたが、表面は悪魔が創った」と言いました。それほど表面の構造は複雑怪奇で分かりにくい。でも私は原子の姿が見えることに感動し、物質の表面の魅力に取りつかれてしまいました。だから悪魔と仲よくすることにしたのです。

以来、ずっと顕微鏡に関わる研究をされているのですか。

 そうですね、もう30年近くになります。トンネル顕微鏡は、鋭い針で物質をなぞることで表面の構造を観察します。今はそれがもっと進化した走査型プローブ顕微鏡(SPM)を使っていますが、これも針を使う点は同じです。電子顕微鏡は誰が操作しても結果はほぼ同じですが、SPMは人によってオペレーションの仕方が異なります。針の先端の微妙な調整にノウハウがあるのです。だからこういう研究をしている人は皆、自分が一番いい像を出すと思っています。うちの研究室にはSPMが7台あり、学生も当たり前のように使っていますが、鮮明な像を出すことに関してはどの学生にも負けない自信があります。そんなこと、あまり自慢にはなりませんけどね(笑)。

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