ハリマ化成グループ

One Hour Interview

One Hour Interview

つねに新しい方法論を追求、結合の切断・形成をコントロールし世の中に役立つ材料を提供

鳶巣 守

ダイヤの原石を手に入れる

触媒を用いた不活性炭素-水素結合の切断反応は村井先生の研究成果のひとつです。

 残念ながら私自身は、学生時代に村井先生の炭素-水素結合切断の研究には関わっていなかったのですが、一般に炭素-水素結合に比べ、炭素-炭素結合ははるかに切断しにくいものです。ブタンのようにシンプルな炭素-炭素結合はまず切れることはありません。全く前例のない反応であり、大げさですがダイヤの原石を手に入れた思いでした。

ニトリルの炭素-炭素結合からスタートされ、それ以外に広げていかれた。

 有機化学と有機金属化学の境界領域になるのですが、有機金属錯体を使えば切断できるということは、ぽつぽつと報告されていました。しかし有機化合物1分子を切断するには、パラジウムなど高価な有機金属錯体1分子が必要で、これでは有機合成の反応としては使えません。有機金属の研究者なら、錯体の上で切れたことで満足するかもしれません。しかし、有機化学の立場からは、これではだめです。有機金属を触媒として使い、切れた錯体を再び触媒に戻して、触媒サイクルを回してやることができれば、有機化合物を作る手法として使える。ただ、工夫は必要になるわけです。今、注目されているのは炭素-酸素結合の切断です。私は、2008年に論文にまとめましたが、それ以降は追随研究というか、この分野に参入する研究者が世界中に増え、競争の厳しい分野になっています。

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