One Hour Interview
つねに新しい方法論を追求、結合の切断・形成をコントロールし世の中に役立つ材料を提供
大阪大学の鳶巣守准教授は、不活性結合の切断と形成という領域で、
世界の研究をリードする数多くの成果をあげている。
次世代ディスプレイに有効な有機発光材料の開発を手掛ける一方、
太陽光や可視光を用いた有機合成へと夢を広げる。
「新しい」を切り口に、唯一無二の方法論を開発し、世の中に役立つ材料を提供する。
若き研究者の活動は、つねに挑戦的だ。
鳶巣 守
大阪大学大学院 工学研究科
原子分子イオン制御理工学センター 准教授
とにかく実験主導
鳶巣先生は学位修得後、民間企業の研究所を経験されています。
自分の研究が、目に見える形で社会に役立っていることが実感できるということで、製薬会社の研究所に入りました。薬は大半が有機化合物であり、その分子設計により生体との相互作用を制御して薬効を発現させるというのは、自分にとっても新しい経験で、興味深い研究ができました。実際、その成果は社会の役に立つわけですし、やり甲斐もありました。今の私の研究は、ものを作るための方法論を見つけることですが、それがたとえば新たな創薬につながるというところまで発想がおよぶようになったのは、企業での経験に負う部分も大きいと思います。
2005年に工学研究科に戻られました。
企業の研究所の場合、研究成果を公表できるのは、特許などの手続きを固めたのちで、場合によっては10年、20年先です。研究者としては、自身の成果をいち早く発表し、論文を書き、世界中の研究者に見てもらいたいという思いがあります。それが大学での研究の魅力でもあります。工学研究科に戻ってからは、研究のテーマも自分で決められますから、半年ほどの間に、20から30のテーマに挑戦しました。小さな、何気ないアイデアでも、とにかく実験主導で、まず反応にかけてみる。恩師の村井眞二先生(現・奈良先端科学技術大学院大学理事・副学長)もそのような手法でしたし、村井先生にみっちり仕込まれましたから。その中でひとつだけうまくいった実験が、炭素-炭素の結合を切断する反応でした。