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伝説のテクノロジー

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地車製作

関西地車製作事業協同組合理事長 大下孝治さん

協同組合設立で一致協力

屋根板を葺き直しているところ。

 9月と10月のだんじり祭が開かれる当日は、大下さんたちは工場で24時間以上待機し続ける。自分たちがつくったり修理したりしただんじりが壊れたらすぐに直さなければいけないからだ。「9月の祭りに出るだんじりは全部でも30台くらいですから、各工務店が手分けして対応すれば何とかなりますが、10月の各地域の祭りのときにはうちだけで80台くらいのだんじりを見なければならないので大変です。もともとだんじり祭は早朝から始まりますので、朝の5時半ごろ工場に出て、壊れたとかコマが外れたという連絡がくるたびに工場で修理に取り掛かります。柱が折れたら柱を取り換えてでも、また曳き回せるようにしなければいけません。24時間ぶっ通しで仕事をすることもあり、もう戦場のような騒ぎですよ」

 そう言いながらも大下さんはどこか楽しげな様子だ。だんじりは施主である各町会にとって、町の宝のようなもの。いいだんじりをつくれば町の人たちは素直に喜び、「あのときのだんじりは素晴らしかった」と語り草になることもある。そのだんじりをつくる仕事に大下さんたちもまた誇りを持っているし、この仕事が楽しく、好きでたまらないのだ。「うちで一番若い職人は23歳です。だんじりが好きだという若い人がこの世界には結構入ってきます。ただ、だんじりだけでずっと食べていけるかどうかはわからないので、うちは一般の住宅や神社仏閣の仕事もしています」

 2013年には岸和田市内の工務店中心に関西地車製作事業協同組合を組織し、大下さんが理事長に就任した。だんじりは町の宝であり貴重な文化財。その仕事を工務店同士が争って取り合っていては、地域の発展にもつながらないから、工務店同士が協力し合おうというのが目的だった。「おかげで今は1年中忙しいですよ。もう関西に閉じこもっていてはダメ、どんどん外に出て行って、各地のだんじり文化の発展に貢献すれば、仕事はまだまだ増えます」

 と語る大下さんによれば、最近は九州や中国地方の町会などからもだんじりの修理を依頼されることがあるそうだ。

 季節は春。9月、10月の岸和田だんじり祭に向けて、だんじりづくりも最後の追い込みに入る。祭りを前にはやる気持ちを抑えながら、大下さんたちは今日もだんじりづくりに精魂を傾ける。

作業場の全景。本体を解体して、部材の歪みや反りを直し、仕口・継手を調整し、再度組み直す。

おおした・たかはる(写真、前列左から2番目) 1952年、大阪府生まれ。大工として働いていたとき、知人から「だんじりの仕事をしてみないか」と言われたのがきっかけで、26歳のときからだんじり製作を中心とする。今は設計と営業が主な役割。西日本以外の需要掘り起こしに熱心で、声がかかれば「どんなに小さな仕事でも断らずに必ず出向く」と言う。

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