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伝説のテクノロジー

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地車製作 関西地車製作事業協同組合理事長 大下孝治さん

黒松でつくるコマ

 大下工務店はその岸和田に工場を構え、だんじりの製造や修理を主に手がけている。私たちが取材に訪れたときには、工場の中に10台くらいのだんじりが所狭しと並べられ、10人ほどの職人が黙々と作業に取り組んでいた。

 「今はだんじりの修理に文化庁から助成金が出る仕組みがあります。そのため古くなって壊れたりしただんじりを長い間、我慢して使っていた町会などが修理に出せるようになり、全国から仕事の依頼が来ています」

 社長の大下孝治さんが話す。

 修理にも、本体締め直し、屋根板葺き直し、彫刻再生補修、鍍金直し等々、さまざまな作業がある。ときには江戸時代につくられただんじりの修理を依頼されることもある。岡山県の某町から、土台の一部が腐食しただんじりの修理を頼まれたときは「大変だった」と大下さんは言う。

 部材を取り換えずに補修してほしいという要望だったため、腐食した部分を削って別の木を添えて補修しなければならなかったからだ。

 だんじり祭最大の見せ場である「やりまわし」のときに重要な役割を果たすコマ(車輪)は、修理よりも新しくつくることが多いという。

 1台のだんじりに4個取り付けられるコマは、約4トンの荷重を支えながら回転してだんじりを走らせなければならない。昔と違って今は舗装路の上を走るので、コマにかかるダメージは激しい。これまでそのコマには通常、松の無垢材が使われてきた。直径60センチ以上の松を切り倒し、幹の部分を厚さ30センチくらいの輪切りにして中心に軸孔を空け、コマとして使うのだ。「コマの材料としては粘りと弾力のある松が一番いいですね。割れにくいんです。でも、米松は割れやすい。国産の黒松が一番です」

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