伝説のテクノロジー
地車製作 関西地車製作事業協同組合理事長 大下孝治さん
特許技術も開発
しかし、直径60センチ以上の松となると、相当な樹齢の木になる。そうそうあるものではない。それだけの松を伐採して運ぶとなると輸送費もそれなりにかかる。しかも幹が曲がっていたらコマには加工しにくい。たとえ巨木でも、1本の松からつくることのできるコマの数は限られている。そこで大下さんが開発したのが、組みコマだ。「無垢コマに使う松よりももっと小さな松材を複数、組み合わせてコマの形にするのが組みコマです。ほぞと穴をしっかりはめ込んだ上にふたで押さえ、最後に金具で止めますから、組んだコマが崩れることはまずありません」
と大下さんが胸を張る組みコマは、同社の特許技術である。「大木を使わないということは環境にもやさしいエコゴマでもあるので、一度挑戦してみることにしました」
大下さんはこともなげに言うが、開発には2年以上かかった。一つひとつの部材を組み合わせてコマをつくるには、精密な加工技術が必要となる。実際、最初のうちはどうしても隙間ができたり、うまく組み合わせられなかったりしたという。
しっかり乾燥させておかないと割れやすくなる問題もあった。窯の中に入れて40℃くらいで約1カ月間乾燥させ、さらにその後長い場合は1年くらい自然乾燥させるという技法にたどり着くまでには、何度も試行錯誤を繰り返さなければならなかった。
現在、大下工務店では無垢コマと組みコマ合わせて年間900個前後のコマをつくっている。