伝説のテクノロジー
松やにの風味香るギリシャワイン『レッツィーナ』
ソムリエ 阿部 誠さん
シャンパーニュとスパークリングワインの違い
ソムリエは、ワインにしても料理にしても、客に押し付けるようなことは決してしない。コミュニケーションしながらお客の好みや希望を聞き出し、楽しめるようにサポートするのがソムリエの役割というのが、阿部さんの考え方だ。
「ワインの楽しみ方に、こうしなければいけないということはありません。自分が楽しければいいのです」
と、阿部さんは言い切る。しかし、当然のことながら一般的な相性はある。フランスワインにはフランス料理、イタリアワインにはイタリア料理が合わせやすいという。ここ数年で急激に品質が向上したと阿部さんが指摘する日本のワインには、やはり日本料理が合わせやすいのだという。もちろんシャンパーニュ専門の「ヴィオニス」は、料理のメニューもフレンチが基本だ。
念のためにいえばシャンパーニュとは、フランスのシャンパーニュ地方でつくられた発泡性のワインのことをいう。それ以外の地域でつくられた発泡性のワインは、シャンパーニュではなくスパークリングワインと呼ばれる。
「香り、味わい、泡のきめ細かさなど、シャンパーニュとスパークリングワインではすべてが違います。そもそも造り方が違うのです。シャンパーニュはビン内2次醗酵という独特の製法を用いています。1回醗酵させてスティルワインを造り、古い年のもの、品種や畑の異なるものをブレンドしてビンに入れ、もう1回醗酵させるのです。しかもシャンパーニュはそのあと地下のカーヴ(貯蔵庫)で短くても2年半から3年は熟成させます。だから泡がきめ細かくなり、香りや旨味が増すのです」
古代ギリシャの時代から松やにを加えるという伝統的な手法を受け継いで造られてきたワイン『レッツィーナ』。今回、阿部さんのレクチャーを受け、ワインの歴史の長さと奥の深さを再認識した。ちなみにローマ神話の酒の神バッカスは、ギリシャ神話のディオニューソスの異名だという。
ディオニューソスに敬意を表しながら、今宵『レッツィーナ』の封を切り、悠久の歴史に思いを馳せてみるのも、また一興ではないだろうか。
阿部 誠さん 1963年小樽生まれ。フレンチの料理人を目指していたが、最初に勤めたレストランでサービス担当になり、ワインに興味を持つようになった。1987年、ソムリエの資格を取得。ホテル西洋銀座のソムリエなどを経て、2005年、銀座8丁目にシャンパン専門の「サロンド シャンパーニュ ヴィオニス」をオープン。2012年には「馬喰町 東京ぶどう酒店」をオープン、オーナー兼ソムリエを務める。一般社団法人日本ソムリエ協会常務理事。セミナーでの講演やワインリスト作成のコンサルティングなどに加え、ワイン教室も主宰している。
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