伝説のテクノロジー
松やにの風味香るギリシャワイン『レッツィーナ』
ソムリエ 阿部 誠さん
ギリシャ特有の白ワインに分類
ギリシャはEU(欧州連合)加盟国であり、共通通貨のユーロにも参加している。だからギリシャの金融危機がEU全体に波及したのだが、ワインに関してはEUのワイン法を導入する一方で、ギリシャ独自のワイン法も制定している。
そのギリシャのワイン法では、ワインを「高品質のワイン」「高品質の甘口のワイン」「地ワイン」「テーブルワイン」という4種類に格付けして分類している。『レッツィーナ』は「テーブルワイン」の中の「ギリシャ特有の白ワイン」(※一部ロゼもある)という分類に入っている。ブドウの品種としては、サバティアノ種の白ブドウを使うのが一般的だ。
「松やにを入れるという手法は伝統的に変わっていませんが、もちろん今はアンフォラなどは使っていません。ブドウをプレスして出てくる果汁の中に松やにを入れて醗酵させ、最後に濾過して松やにの成分は取り除きワインとなります。ただ、香りは残ります。入れる松やにの分量は、果汁1リットルに1グラムから、多くても5グラムほどです」(阿部さん)。『レッツィーナ』の生産者はアテネの西方に位置するペロポネソス半島に多い。この地域は松が多いことでも知られている。阿部さんによれば、「松の木の表面にナイフなどで傷をつけ、そこから出てくる松やにをバケツで受けて採取する」という古来の方法が、今でも一般的に使われている。
では、いったいどんな味なのか。それを知るためには、もちろん飲んでみるしかない。だが、ネット通販では売っているサイトもあるし、ギリシャ料理店ならたいてい置いているが、『レッツィーナ』を売っている酒販店はそう多くない。今回も銀座周辺の酒販店を4~5軒探してようやく見つけることができた。その『レッツィーナ』を阿部さんが経営する「サロン ド シャンパーニュ ヴィオニス」に持ち込んで試飲することにした。