次代への羅針盤
リスクを恐れず、もっともっとアクティブに
赤井周司
酵素と遷移金属を組み合わせるという発想
すでに世界中で多くの研究者が取り組んでいた遷移金属の研究分野に後から割り込んでいって自分のオリジナリティを生み出すのは容易ではありません。酵素の研究にも魅力を感じていた私はOBに協力する道を選びました。
当時、野依先生は講演会などで「自然界の酵素を超える触媒をつくり出したい」とよくおっしゃっていました。酵素は自然が生み出した非常に高性能な触媒で、ごく微量で大量の物質を高選択的に変換することができます。ただ、分子量が非常に大きいし、1つの酵素が変換できる物質(化合物)は限られているというのが通説です。野依先生は、酵素よりずっと小さな分子で酵素と同等、もしくはそれ以上の働きができ、さまざまな化合物に適用できる人工の触媒をつくり出せば、化学合成の世界が変わると力説されていました。私は野依先生とは視点を変えて、酵素をうまく使いこなすことができればいいのだと考え、酵素の研究に取り組んできました。
しばらくして、私は酵素と遷移金属を組み合わせたらもっと面白いことができるのではないだろうかとひらめきました。ちょうどその頃、スウェーデンのある著名な先生がそのような論文を発表しており、それに触発されたのかもしれません。そして、2000年頃から新たに研究をスタートさせました。