次代への羅針盤
科学者は社会の中の存在であれ
玉尾皓平
「青い目をした黒い牛」
私は、京都大学を退職してから研究とは離れていました。しかし最近、筑波大学の先生と一緒にまた少し研究を始めています。ケイ素化合物に関して書き残した論文があったので、それを仕上げようと考えています。研究はやはり面白い。特に若い人とディスカッションしながら研究しているときは、本当に楽しいものです。
研究をするときにつねに心がけていることが、一つあります。人まねは絶対にしない、ということです。
小学生のときに写生大会がありました。私たちは黒い牛を描いていたのですが、ふと隣の子の絵を見たら、牛の目を青く塗っていた。いいな、と思って私もそうしたら、先生から「人まねでは入選できない」といわれてしまいました。それ以来、人まねは恥ずかしいことだと肝に銘じています。研究テーマを考えるときにも、必ず青い目をした黒い牛が目に浮かびます。