次代への羅針盤
科学者は社会の中の存在であれ
玉尾皓平
異分野との交流が成長を生む
スカラー共同研究プログラムの目的は、新しい研究分野をつくることとリーダーの育成です。異分野の研究者が集まったグループで勝ち抜き戦を勝ち抜いていくには、強いリーダーシップが必要です。このプログラムが進めば、優れたリーダーが育ってくることと期待しています。
私はかねて研究費の確保、研究時間の確保、そして異分野交流の促進が若手研究者育成の3原則だといい続けてきました。スカラー共同研究プログラムでやろうとしていることは、この3原則と重なっています。
今の研究者は研究以外の仕事が増えてしまい、研究時間を確保しにくくなっています。加えて、ご承知のように大学の研究費がどんどん減らされています。異分野の人と交流し、多様な知識を身に付けるのはとても大事なことですが、今の研究者はこうした事情もあって異分野の人との交流がなかなか難しくなっています。
私は京都大学にいたときも理化学研究所にいたときも、異分野交流を積極的に推奨し、そうした場を提供してきました。もちろん異分野との交流が必要なのは、アカデミックの研究者に限ったことではありません。企業の研究者にも同じことがいえるのではないでしょうか。
分野を超えたつながりは、とても大切です。一つの分野に閉じ込もっていては、研究者はなかなか成長が難しいものです。また、新しい研究分野の誕生も期待できません。新しい研究分野が生まれ、学問が発展するためには、異なる分野と交流を行って、研究者も学問もどんどんブラッシュアップしていく必要があります。